長崎県平戸市沖で昨年4月、同市の巻き網漁船「第11大栄丸」(135トン)が沈没し11人が死亡、1人が行方不明になった事故の原因を調査していた運輸安全委員会は28日、船体右後方からの「追い波」の中を航行中、波の頂上に乗ったことで船体を立て直す復元力が弱まり不安定になった−などとする調査報告書をまとめた。船体の制御が難しい状態で、甲板に打ち込んできた海水や積んでいた漁網が一気に右側に寄り、傾斜が急拡大して転覆したとみられるという。
また、船長らが十分な減速操作を行わなかったことも一因となった可能性があるとも指摘した。
調査報告書によると、第11大栄丸は5隻の船団を組んで東シナ海の漁場に向けて航行。右後方から高さ4〜5メートルの波を受けた後、船が大きく右側に傾き転覆し、右に旋回しながら沈没した。
波の頂上では海水と船体の接触面が小さくなるため、船体の復元力が減って舵も効きにくくなる。このため「追い波」に遭遇した場合は、大きく減速し、できるだけ早く波をやり過ごすようにするが、第11大栄丸は十分に減速せず波とほぼ同じ速度となったため、波の頂上で不安定になった。乗組員は波の接近に気づいていたが「転覆の恐れがあることを予測できず、回避する手段もよく知らなかった可能性が高い」(安全委)としている。当時、船団を組んでいたほかの4隻は大きく速度を落として無事だった。
調査報告書はまた、甲板上に広い作業スペースが必要な巻き網漁船特有の構造も事故の一因と指摘。
船体上部を広くしている分、下部を小さく絞ることで、総トン数を漁業法に定められた制限内に収めることが多いとし、甲板上には海水が溜まって、船体の傾斜で重い漁網も移動しやすい−など、通常の運搬船に比べて荒天時の安定性が劣るという問題点があるとして、水産庁に対し、総トン数の引き上げを検討するよう求めている。
事故は昨年4月14日朝に発生。乗組員22人のうち船長ら11人が死亡、1人が行方不明になった。救助された10人も肺炎などで全員入院した。
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